Q、 事故発生直後、被害者の留意点について教えて下さい。
A、 まずは警察に事故届けをします。本来は加害者の責務ですが、加害者が怠っている場合は被害者自身でしましょう。
事故の扱いは人身事故としての扱いと物件事故扱いの二つがあります。たまに怪我をしていても軽症だと理由で
物件事故扱いになっていることを見かけますが、治療費の請求、後遺障害等級の認定等で不利に扱われることも
ありますので、怪我の程度に関わらず人身事故扱いにしておくことが大事です。
その際には診断書の提出をお忘れなく。
また、警察に届け出るのとは別に、相手方の氏名、住所、連絡先はもちろんのこと、任意保険に入っていればその
保険会社、担当者、連絡先も確認しておく必要があります。
さらに、目撃者がいればその確認、車両の損害程度についても写真に収めておいや方が良いと思います。
また、気が動転しすぐに病院へ行かず、しばらく経ってから行った場合、後に、治療費の支払いなどで、加害者側
の任意保険会社との間せもめることもあります。怪我をしていたら自己判断せず、速やかに病院にかかりましょう。
Q、 人身事故(傷害事故)の発生から解決までの流れを教えて下さい。
A、 まずは治療に専念します。治療してその怪我が治った場合は、後遺障害等級の認定を受けることになり、その結果を
前提に示談交渉することになります。後遺症の認定結果に不満があれば、意義申し立てをすることもできます。
ところで、示談交渉とは当事者同士の話し合いによる解決方法ですが、話し合いがまとまらなければ、交通事故紛争
処理センター等のADR(裁判外紛争処理機関)のあっせん、調停等を利用するか、もしくは裁判で解決することを検討
しなくてはなりません。
Q、 症状固定とはなんですか?
A、 「症状固定」とは、傷病の症状が安定し、医学上一般に認められた医療(基本的に実験段階又は研究的過程にあるよう
な治療方法は含まれません)を行っても、その医療効果が期待できなくなった状態、つまり、その傷病の症状の回復・
改善が期待できなくなった状態を言います。症状が一進一退になった状態ともいえます。
また「症状固定」を賠償関係から見た場合、それは賠償期間の終期を意味します。つまり、「症状固定」をすると
治療期間が確定され、以後の治療費、通院交通費、休業損害、入通院慰謝料等は基本的に請求できなくなります。
Q、 治療中、保険会社から治療費の打ち切りを言われた場合の対処法は?
A、 解決までの流れの中で、大変重要な局面と言えるでしょう。その対処法によっては解決への明暗が分かれるところで
もあります。まず、治療費が打ち切られるからといって、病院等へ通ってはいけないという訳ではありませんので、
症状があって治療がまだ必要と思われる場合は病院の先生とも相談し、引き続き通院すれば良いのではないでしょ
うか。打ち切れた後の治療費については当面自己負担になりますが、状況によっては示談の際、加害者側に請求す
ることも可能だと思います。ただ、加害者側が負担するかどうかはあくまでも交渉次第です。
いずれにしても、被害者にとって大変重要な対処になりますので、出来るだけ早く専門医(弁護士、行政書士)に相
談することをお勧めします。
Q、 事前認定と被害者請求の違いは?
A、 「事前認定」は加害者側の任意保険会社を通じて行います。一方、「被害者請求」は、加害者両に付保されている
自賠責保険に対し直接行います。そして、後遺障害等級の判断、つまり、等級に該当するかどうか、該当するとし
たら何等級に該当するのかの判断については「事前認定」「被害者請求」ともにJAを除き、損害保険料率算出機構
という法律に基づき設立された損害保険料率を算出する団体が行っています。
「事前認定」「被害者請求」ともにメリット、デメリットがあります。「事前認定」のメリットは手続きの簡便さ
にあります。後遺障害診断書を加害者側の任意保険会社に提出すれば、あとは保険会社が全て手続きを行ってくれ
ます。逆にデメリットは、全て手続きを行ってくれるとはいえ、加害者側の任意保険会社は加害者の示談を代行
する立場ですので、被害者の為に有利になるよう率先して動いてくれるかどうか、その不透明さにあるのではない
でしょうか。一方、「被害者請求」のメリットですが、なんといっても透明性が担保されるところにあると思い
ます。被害者側で納得のいく医証(診断書、画像、意見書等)を整えて被害者自ら(委任を受けた弁護士または行政
書士)に相談されることをお勧めします。
Q、 むち打ち症でも等級認定されるのでしょうか?
A、 むち打ち症からくる症状は頚部の痛み、腰の痛み、下肢、上肢のしびれ、頭痛、めまい等多種多彩な症状として
現れます。いずれも目に見えないだけに、なかなか等級認定されることが難しいのが現状です。しかし、これら
目に見えづらい後遺症であったとしても、一定の要件を満たしさえすれば等級認定されることも十分あります。
平成21年の「損害保険料率算出機構」における統計ですが、後遺症害等級に認定された全体の内、約半分が
「むち打ち症」からくる症状で認定されたという結果もあります。
ところで、このむち打ち症からくる症状が等級として認定されるとしたら、「局部の神経症状」として14級
もしくは12級に認定されます。12級はしびれ、脱力、知覚障害等の神経症状があって、それが画像や神経
学的検査等(これらを他覚的所見といいます)によって証明された場合に認定をされます。
また、14級については症状経過、治療状況等から、その症状が将来に残存することが医学的に説明可能な
場合に認定をされます。
いずれにしても、目に見えづらい後遺症だけに、1回で適正な判断がされるとは限りません。そのため、後遺
障害等級の認定申請では意義申し立て(再審議)て続きが何度でもできることになっています。非該当(等級とし
て該当しない)になったからといって諦める必要はありません。
Q、 後遺症の手続きを被害者請求でしたいのですが、自分で行うのは難しそうなので専門家に依頼したいのですが、
どのような人に頼めばよいのでしょうか?
A、 自賠移籍保険における後遺障害認定手続きを業務としてお引き受けできるのは、弁護士または行政書士です。
しかし、弁護士も行政書士も業務範囲が広いので、交通事故や後遺症害を専門とする弁護士や行政書士依頼
するのがいいと思います。インターネット上に多数のホームページがありますが、後遺障害等級の認定につ
いては要件、基準が公開されている訳ではありませんので、経験と実績があるかどうかを見極める必要があ
ります。
Q、 被害者として何を請求することができるのでしょうか?
A、 被害者に生じた損害を請求することができます。その損害を大別すると、障害分の損害(怪我に関する損害)
、後遺症害分の損害(後遺障害に関する損害)、死亡分の損害(死亡に関する損害)に分かれます。
また、その内容によって、財産的損害と精神的損害(慰謝料)に分かれます。前者は積極損害と消極障害に
大別されます。まず積極障害ですが、交通事故によって被害者が出費を余儀なくされた損害を言います。
一方、消極損害は事故にあわなければ被害者が将来得られたであろう利益を言います。
Q、 障害部分の損害にはどのようなものがありますか?
A、 治療費、諸雑費、通院交通費、付添看護費、文書料、休業損害、入通院慰謝料などです。
Q、 後遺障害部分の損害にはどのようなものがありますか?
A、 基本的に後遺障害慰謝料と免失利益があります。
Q、 免失利益とはなんですか?
A、 後遺障害を負ったことによって事故前の労働能力が維持できなくなり、収入が減少するために失われる
利益のことを言います。どの程度労働能力が失われるかは等級ごとに一応決められています。
例えば、要介護1級から3級までは100%、一番軽い14級は5%ということになります。通常は
以下の計算式で算出します。
【基礎収入(年収など)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数】
Q、 家庭の主婦でも、休業損害や免失利益を請求できるというのは本当ですか?
A、 本当です。家事を行っている家庭の主婦も立派な家事従事者(家事労働者)として休業損害・免失利益の
対象になります。休業損害の算出方法ですが、一日あたりの所得に受傷のため家事労働に縦事できな
かった日数をかけて算出します。
そこで、家事従事者の所得の考え方ですが、自賠責保険の場合、1日当たり5,700円で計算する
ことになっています。一方、裁判基準としては年収3,499,900円(賃金サンセス第1巻第1表
の産業計、企業規模計、学歴計、女性労働者の全年齢平均の賃金額/平成20年)を365日で割った
1日当たり約9,600円で計算されます。
Q、 家庭の主婦がむち打ち症で後遺障害等級第14級に認定された場合の損害額を教えて下さい。
A、 いわゆる「赤い本」基準で計算すると次のようになります。
・後遺症害慰謝料 1,100,000円
・後遺障害免失利益 757,640円
合計 1,857,640円
2015年5月21日 9:44 PM